'03/08/27 片品川釣行


'03/08/27 全日本暇人協会
市村 晃(記)


涙の片品渓流


 雨続きの夏休み連休二日目は、雨の渓流に挑んだ。
暇人恒例の解禁レポートに良く顔を出す片品川。会長のお気に入りの渓流だ。
3月の解禁は、お役所仕事の年度末の繁忙期に重なり欠席を強制された。この河川への思い入れも手伝い片品本流に足を運んだ。頭の中でレポートを思い出し、会長の釣った30cm尺越えのイワナのポイントを目指す。
現地に着くなり川を覗き込めば、心配していた通りの結果が私を待ち受ける。
川は茶色に濁り、淵と言う淵は全て瀬と化し全てを飲み込もうと粗い波を立てる。海をも思わせる三角波には腰が引け、あまり見つめていると目が廻りそうにも なった。急いで車に戻り、エスケープ河川を探しながら支流に車を走らせる。片品の本流を右に折れると薄根川に差しかかる。毎年この辺は良い思いをした川で あったがここでも白波が淵をかき消している。更に上流へと追いやられるように雨の中を濁りの無い流れ探しに費やした。
かなり上流まで来たが、ほとんどのポイントがフライの出来る状況とはかけ離れていた。こんな時、餌竿があれば大きなミミズで大岩魚がイチコロなんだろう な、なんて嫌らしい空想を描きながらも濁りの渓流を羨んだ。やっぱり家族と遊んでやるか?と諦めながらも今回を逃すと次は長いな何て天使と悪魔の駆け引き が始まる。
2時間あまり渓流探しであちこち回り、諦め半分な気持ちで、早い朝飯を取りながらうたた寝。ふと昔の源流釣行を思い出しながら会長の言葉を思い出す。早い言葉が付く川では、大水に注意。悪いが
付けば危険な悪場所が多い河川だ。なんて昔話に耽っていると、フト・・針葉樹と広葉樹の話を思い出した。針葉樹は葉が下を見ているので雨が落ちるが広葉樹 は上を向いているので木の幹を通って根に水を送る。だから雨の日でも濁りが出ない場所が多いのだと。この言葉を思い出すや否や急いで車を走らせ上流を目指 した。

今度の目標は川の濁りでは無く広葉樹の覆い茂る渓流だ。
出来るだけ車を源流部に持ち込みそこからは車を置いて歩きで上流を目指した。雨の中の河童での
歩きは直に息を上がらせたが、上流の広葉樹が魚の匂いを運ぶかのように先を急いだ。2時間ぐらい上り詰めると藪沢に近い状態の濁り一つ無い源流が顔を現す。会長ありがと〜すと会釈しながら、ココからは俺の腕次第すね?
なんて、源流で不気味に大声を上げながらフライを流れに流した。今回の源流は冷夏の影響も手伝い水生昆虫が何処にも見当たらなかったが、この状況ではそう も言ってられない。もうここまできたらマッチングザハッチもライズも糞食らえである。カゲロウが居なけりゃコガネ虫、それでも駄目ならカブトムシ。かなり 危ない心境の私であったが
それら、甲虫ですら何処にも居ないこの場所であった。卑屈のなか選んだフライはアリ。働き者のアリさんなら台風の中でもいけるだろう?間違ってもキリギリ スだけは選ぶまいと会長の顔を思い出しながらも、働き者の坂本さんタイプのアリさんを選んだ?しかし、アリさんの働きはまったくと言っていいほど雨の中の 流れの速いこの場所では効かなかった。
乾かしても乾かしても、直に沈んでしまう。大体何も流れてこないこの状況でドライは無いだろうと思いながらも、どうしても浮かして釣りたいと意気込む自分の頑固さに少し惚れ込みながら釣り上がる。
2時間以上無反応のまま体中泥だらけで高巻き(濡れるのが嫌なだけの軟弱モノと会長に怒られそうだが)を繰り返す。
ココは片品支流だよな?かなりハードすぎる道のりに、峠を乗り越して谷川岳まで来ちゃったか?と少し不安になり始める。遭難保険まだ払ってないじゃんかよ〜・・暇人規則失格?・・みんな探してクンネ〜よ、事前届出してね〜し・・
だいち今回は家族旅行の筈なのにどうして、雨の中釣りしてんだ?これも会長の教えだ・家庭を省みず釣り場に着いたらマズ釣れ♪暇人規則第5条の教えを体が自然に実行していた。

ココで落ち着きを取り戻し、とりあえずココまで来たんだから真剣に釣っとこう?と別の発想に走る自分もかなり好きだった。
改めて渓相を見つめると、かなりの藪沢になっている。ここでフライは辛いな、アリも無いかな?なんて不意に昆虫観察第2段再開。辺りは雨で濡れた鮮やかな 蜘蛛の巣だらけだと今頃気が付く。モノは試しとここで蜘蛛フライにチェンジ。キャストが出来ない藪沢で格好悪いも無いだろうと、弓矢状にロッドを曲げ蜘蛛 を流れに投げ飛ばす。半身半疑のこの技に?小さなイワナが飛びついた。今日始めての魚に、行ける・これ行けるでと急に関西弁で次々に狭い流れにフライを投 入。前代未聞のこの技に小一時間で7匹のイワナが飛びついた。会長ありがとう御座います、なせば成るの言葉通り釣れました。
でかいフライをど真中ですねと、藪沢に笑い声が木霊する。もうこれ以上行けないだろうと言うぐらい狭い流れに着いた時にはもう3時を廻っていた。車まで明 るい内に戻れるかな?暗くなると熊出るかな?今年は不作で俺は旨そうだし?今頃になって小心者の自分に戻り、何時もの父親の顔を取り戻す。家族との約束は 12時だったような?お昼はみんなでバーベキューしようね、と言う子供の笑顔が心に刺さったがこの時点では時既に遅し、我哀しきかな暇人の一員なり。規則 は破るが心は何時も遊び心で行こうぜの会長のお言葉を全うするが宿命と泣きながら雨の源流を駆け下りた。
市村晃(記)


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